変形性膝関節症とは
膝への負担によって膝関節軟骨や半月板がすり減ったり、外傷や疾患による損傷を受けたりといった原因で膝関節が炎症を起こし、痛みや腫れを生じる疾患です。悪化すると膝の変形や、歩行できなくなるなど深刻な症状につながり、QOL(生活の質)を大幅に下げてしまいます。日常生活に大きな支障を生じさせないためには、初期のうちに発見して適切な治療を続ける事が重要です。
膝の痛みや違和感はよくある症状であり、変形性膝関節症でも初期には痛みがすぐに治まってしまう事から悪化して日常生活に支障が生じてしまった後に、受診される事が珍しくありません。つらい症状を出さないために、膝の違和感や痛みに気付いたら早めにご相談下さい。
変形性膝関節症の症状
初期・中期・末期の段階に大きく分けられます。中期でも日常生活への多大な支障や制限を生じ、末期は日常的なほとんどの動作に困難が伴う深刻な状態になります。また、中期になると行動の自由度が低くなる事で運動不足になり、血行や新陳代謝が悪くなって全身の健康状態にも悪影響が及びます。また運動不足で体重が増えると膝への負担が大きくなり変形性膝関節症が悪化しやすくなります。
初期の段階で早めに整形外科を受診して適切な治療につなげ、進行を防ぐ事が変形性膝関節症ではとても重要になります。
初期
- 起床直後の歩行時に違和感がある
- 膝に体重をかけると痛む事がある
- 膝の痛みはあるが、少し休めば治まる
中期
- 膝の痛みが長く続き、なかなか治まらない
- 膝をまっすぐに伸ばせない
- しゃがむなど膝を深く曲げる動作ができない
- 正座ができない
- 膝の周辺が腫れている・むくんでいる
- 膝がデコボコしている
- 膝の曲げ伸ばしでコリコリ・ポキポキという音や振動がある
末期
- 膝の変形が目立ってきた
- 日常的な動作でも強く痛み、膝を動かすのがつらい
- 歩くのがつらい、歩けない
- 立つ・座るという動作ができない
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は、膝に負担をかける様々な要因が関与して発症する一次性と、骨折などの外傷や関節リウマチなど明らかな原因があって発症する二次性に大きく分けられます。
変形性膝関節症のほとんどを占める一次性の変形性膝関節症の要因には、加齢、筋力の低下、肥満、スポーツ、靴などがあり、こうした要因が積み重なる事で膝関節軟骨や半月板がすり減って発症します。
一次性変形性膝関節症の主な原因
- 加齢
- 筋力の低下
- 肥満
- 膝に大きな負担のかかるスポーツを長期間行っていた
- O脚や偏平足
- 日常的にハイヒールを履いている
- 足に合わない靴を履いていた期間が長い
など
二次性変形性膝関節症の主な原因
- 膝周辺の骨折に伴う膝関節軟骨や半月板の損傷
- 靱帯損傷
- 半月板損傷
- 膝蓋骨脱臼
- 膝関節捻挫
- 慢性関節リウマチ
など
変形性膝関節症の検査と診断
問診で症状の内容や始まった時期と経過、ライフスタイル、スポーツ歴、これまで経験したケガや病気などについて詳しく伺います。患者様の歩き方、脚の変形、腫れ、痛みが起こる部位、曲げ伸ばしの可動域などを確認し、X線検査や関節液検査を行って総合的に判断し、診断しています。
変形性膝関節症と関節リウマチの症状は似ていますが、必要な治療法が大きく異なりますので、その鑑別は特に重要です。どちらの疾患も早期の治療が将来のQOL(生活の質)を上げるのに大きく役立ちます。
当院では、変形性膝関節症と関節リウマチの専門性が高い研鑽を長く積んできた整形外科専門医が細心の注意を払って丁寧に診療していますので、膝の軽い痛みや違和感があったらできるだけ早くご相談下さい。
変形性膝関節症の治療
患者様の膝の状態、年齢、ライフスタイル、ご希望などに合わせて、薬物療法、注射、手術など多くの選択肢から最適な治療法を選べるようにしています。痛みの緩和だけでなく、損なわれた機能をできるだけ回復させる治療を行っています。
薬物療法
炎症と痛みの緩和のために、非ステロイド性抗炎症剤の内服薬・外用薬(湿布薬・軟膏)、オピオイド系内服剤を使った治療を行っています。短期間に効果を得やすい内服薬には副作用を起こしやすい可能性もありますので、経過を慎重に確認しながら状態にきめ細かく合わせた処方にしています。
注射
痛みの緩和と膝関節機能を高める効果、そして変形性膝関節症の進行予防効果も期待できる膝関節へのヒアルロン酸注射を行っています。また、膝関節の炎症が強い場合には、炎症を抑える作用を持ったステロイド剤を膝関節内に注射する治療が行われる事もあります。
リハビリ
軽度の症状の場合には、適切なリハビリテーションによって痛みを軽減させ、進行予防効果も期待できます。膝関節を支える筋力を強化して膝への負担を軽減し、関節可動域を改善させてスムーズな動きを回復させるトレーニングを行います。
再生医療
上記の、薬物療法を始めとした保存的治療では十分な効果が得られない場合に再生医療という選択肢が当院ではあります。
痛みの緩和や機能向上を目的にした手術を検討します。原因や進行度、患者様の年齢や体力などによって適した手術法は異なります。また、状態によっては手術をお勧めできない場合もあります。